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オスプレーに関して その2

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1980年にイラン戦争で人質救助に失敗し、単に垂直に飛行可能と共に長距離を高速で飛べる機種の必要性が明らかに成り、軍(海兵隊、空軍、陸軍、海軍等)は、此れまでのヘリコプターに換わる機種の開発提案を航空機製造各社に要請しました。

VTOLとSTOLに関して:
一般の飛行機は長い滑走路が必要ですが、此れに対して垂直に離着陸が出来るヘリコプター等をVTOL(Vertical Takeoff and Landing)と呼び、短い滑走路で離着陸が出来る飛行機をSTOL(Short Takeoff and Landing)と呼び、此れらは戦争時に滑走路が整っていない場所への兵士の輸送や人質救出、更には災難時の人命救助に欠かせない輸送手段です。 オスプレーはVTOLであると共にSTOLでもあり、幅広い複雑な状況で活躍が出来る事を目的に開発製造されています。 両翼の先端にターボプロップエンジンが付いていて上方と前方に回転出来る方式は垂直に離着陸(VTOL)が出来ると共に飛行機同様の飛行も出来て、従来のヘリコプターに比べて高速(約500Km/時)で飛行が出来て、当然長距離を短時間で飛行する事が可能になります。 しかし、世界で初の試みの為に克服しなくては成らない技術的困難も多数あり、此れからも改善が繰り返される事は明らかです。

此れまでの経過:
1981年にVTOLとSTOLの開発要請が発表され、航空機製造各社はそれぞれの開発機種の提案をしました。 1985年にボーイング社とベルヘリコプター社の共同開発のオスプレー(V-22)の試作機(プロトタイプ)6機が完成、1986年に他社を退けてボーイング社とベル社のオスプレー採用が決定し、正式に開発が始まりました。

1988年に最初の開発機1機が完成しましたが、制作費の高い事が問題に成り、1989年から政府からの開発費が凍結され、1992年に再開されました。

1989年に試験飛行が開始されましたが、1991年から1992年に掛けて2度の墜落事故があり、再度一時停止となり成りましたがその後安全面での改善で1993年に開発再開の許可が下り、1994年に製造開発の段階に入り、1997年に製造工程を含むオスプレーの開発並びに飛行試験が始まり、1999年に4機が試験用として海軍に納入されました。 2000年に更に2機の墜落がありましたが、2005年に墜落機事故究明/安全対策を含め、総合的飛行試験(長距離飛行、高度、荒野や船上(格納)での操作/機能、安全性等)の評価結果が成功と発表されました。

機能や安全性では成功とは発表されたもののアメリカ国内ではオスプレーの長期間に渡る開発で費用の増大と共に、従来のヘリコプターに対して約2倍の価格で、将来のオスプレー製造に関して大きな議論が持ち上がりました。

2007年に最初の戦場配備が成され、その後も多額の資金が投入されて安全性向上、操縦性向上、飛行機能(速度、高度)向上、装備充実等の数々の開発プログラムが加えられています。


参考:
オスプレーにはグラス.コックピットと呼ばれるコンピュータースクリーンに依る操縦、機器、地図、その他のモニターが可能で、これらはナイトビジョン(暗闇での視野)も可能に成っています。

コンピューターに依るCockpit Management System (CMS)は自動操縦を可能にし、前進飛行からパイロットの手を借りずに自動操縦で地上15mの位置に停止状態にする事が出来ます。

オスプレーは一般的にV-22と呼ばれますが、目的(軍)に依り装備や航続距離等が異なり、V-22A、HV-22、SV-22、MV-22B、MV-22C、CV-22B等の機種があります。

現在沖縄には24機のCH-46(シー.ナイト=Sea Knight)が配備されていますが1962年から1971年に掛けて製造された40年以上使われた古いヘリコプターで、オスプレーは此れらの代替機です。

CH-46の巡航速度は約265Km/時、航続距離は600Km、必要乗組員3人、積載量4.5トン、此れに対してオスプレーの巡航速度は約509Km/時、航続距離(積荷状態)は2224Km、必要乗組員2人、積載量9トンとの事です。

オスプレーは現在イラク、アフガニスタン、リビヤ、その他に配備され、アフガニスタンでは飛行速度や航続距離でその威力を発揮していて益々活躍の場を広げているとの事で、タリバンは従来のヘリコプター(CH-53)を“肥満な牛=鈍行”と呼んで軽蔑しているものの、オスプレーの俊敏さを恐れているそうです。

オスプレーは戦場での人質の救助や病人/怪我人の救助と共に災難時の人命救助にも期待は多く、アメリカ以外の国でも採用が検討され、ノルエー空軍は2015年から全天候人命救助機として配備、イスラエルでも採用が検討されています。


次回は事故や安全性に関して書く予定です。


参照:
http://en.wikipedia.org/wiki/Bell_Boeing_V-22_Osprey
http://www.businessweek.com/ap/2012-07-23/us-osprey-aircraft-arrive-in-japan-amid-protests
http://www.stripes.com/news/pacific/okinawa/ospreys-will-replace-sea-knights-at-futenma-marine-corps-says-1.145328
http://defense.aol.com/2012/08/23/the-osprey-after-five-years-leading-a-tsunami-of-change/
http://www.military-today.com/helicopters/ch46_sea_knight.htm
http://www.military-today.com/helicopters/bellboeing_v_22_osprey.htm