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オスプレーに関して その3 - フロリダ州での事故(2012年6月)

飛行機の事故原因には色々考えられますが、多くの場合はパイロットの操縦ミスに因るものです。 現在、問題と成っている2件のオスプレー事故、即ち2012年4月にモロッコで起きた事故と2012年6月に起きた事故も故障では無くヒューマンエラーだとされています。 しかし、“例えヒューマンエラーだとしてもオスプレーは操作が難しいが為に事故が起きた”との意見の報道が一般的な様です。 果たして真実は如何なのでしょう?

今回は2012年6月にフロリダ州で起きた事故に関して書きますが、事故報告書を理解し易くする為に言葉の説明をして於きます。

ウエーク‐タービュランス(Wake Turbulance):
此れは全ての飛行機が飛んだ後に残す渦巻状の乱気流で、パイロットや管制官が常に注意をする危険な現象です。 飛行機が離陸後に充分な時間(距離)を置かずに後続機が飛び立ちますとこのウエーク (タービュランス)に巻き込まれて一方の翼の浮力を失って回転したり、急降下をする事に成りかねません。 ボーイング757は特に大きなウエークを起こす事で知られていますし、ヘリコプター(特に2枚羽根)は大きなウエークを起します。 旅客機と小型プロペラ機(例えばセスナ機)が同時に離陸待ちをしている様な場合、管制官はウエークの影響を受け易い小型機を先に離陸させます。
http://www.pilotfriend.com/training/flight_training/wake_turb.htm


オスプレー事故調査結果:
2012年6月13日、フロリダ州で離陸7分後に約10Km(6マイル)離れた地点に墜落、乗組員5人は全員怪我はしたものの命には別状無く事故機を脱出。

事故機は2機で編隊飛行の訓練中で、他の1機(オスプレー)の後を追う状態で、両機は機体を30度に傾けながら左に180度の旋回(Uターン)を始めた際、先頭機が僅かに高度を(366フィートから336フィート)落とし、同時に追っていた事故機は354フィートの高度で瞬間的(短時間)に右に旋回、その直後に前方機との距離を保つ為に左に旋回、この際に先頭機の飛行軌跡を横切って仕舞い、先頭機の旋回角度(30度)と事故機の旋回角度の両者が原因で事故機の左のプロップローターが先頭機のウエーク(タービュランス)に入る。 (離陸からこの時点まで副操縦士が操縦)

事故機の左プロップローターが先頭機のウエークに入った直後から左翼は浮力を失って左に回転を起こしながら急降下、正操縦士も操縦管を手にして復元を試み、左右を水平には出来たものの降下速度を制御出来る前に24m‐30m級の木の林に突っ込んで墜落。

正操縦士も副操縦士も共に先頭機の飛行軌跡から左右並びに上下の充分な距離を保ていたのでウエークの影響は受けていないと信じていたものの、フライトレコーダーのデータに依ればそれは間違いであった。

結論:
操縦していた副操縦士が先頭機の軌跡を横切った事、更に指揮官である操縦士が危険な状況を察知出来なかった事が原因で、最終的には正操縦士と副操縦士の知覚判断の誤りに加え、旋回時の軌道と先頭機の僅かの高度が下った事が事故原因である事は明らかだと結論とされている。

問題点(今後の課題):
a. 編隊飛行時の位置(先頭機に対する後部位置角度、距離、上下距離)が確立されていない
b. オスプレー(V-22)のウエークタービュランス発生の模型が不充分
c. オスプレー(V-22)のフライトシュミレーターにウエークタービュランスが無い
d. 飛行中にウエークタービュランスに入った場合の処置方法が充実していない

http://www.afsoc.af.mil/shared/media/document/AFD-120830-034.pdf


次回は他の事故に関して書く予定です。