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クラスA デイーゼルプッシャー用シャシー

ガソリンエンジン搭載のクラスAシャシーの場合はシャシー会社、即ちフォード社やシボレー社(ワークホース)がエンジンもトランスミッションも製造しますが、デイーゼルプッシャー用シャシーの場合は少々異なります。

デイーゼルプッシャー用シャシーは数社で製造されていますが、高級車用や自社製(RV会社)シャシーを除いた一般的なデイーゼルプッシャー用はスパルタンモータース社製かフレートライナー社製です。 

スパルタンモータース社は主にバスや消防自動車を製造し、フレートライナー社は大型トラックを製造しています。 各々の会社はRV向けのシャシーを製造、重量や長さに応じてデイーゼルエンジン、トランスミッション、サスペンション、車軸、ブレーキ、ステアリングギヤーボックス、その他シャシー製造に必要な部品を他社から調達して、何種類かのモデルを用意しています。 1990年代から2000年前後のスパルタンモーター社のシャシーはサミットモデルと其れより大きいマウンテンマスターモデルがありました。

RV会社、即ち居住部分を製造するウイニベーゴー、フリートウッド、ナショナルRV、その他の会社はそれぞれの会社のデイーゼルプッシャーの生産計画に合わせてシャシーを纏めて買う契約をします。  この時に、前回書きましたケロビアンの様にシャシーの仕様が完全に定まっている場合もありますが、エンジンをカミンズにするかキャット(キャタピラー)にするか、又はトランスミッションを260HPにするか275HPにするかの選択をする場合もあります。

全て最高部品、即ち大きなエンジンに大きなトランスミッションを装備すればRVerは喜びますが、金額を支払う事を考えると現実的になります。 従って価格は売れ行きに大きく左右しますのでRVerが最終的に判断するコンビネーションを読む必要になります。

1990台から2000年始めに掛けてはRVのサスペンションはリーフスプリングからエアーサスペンションへ、更には前輪の一体車軸からIFS(前輪左右独立)に移行中でそれらは入り混じっていましたので、同じシャシーモデル名でもRVメーカー向けで異なった仕様の場合もありました。 この為、ショックアブソーバーを交換の際は同じシャシーモデル名でもRVメーカによって異なるショックアブソーバーが使用される様な事も珍しくありませんでした。  

1990年台から2000年代は大体カミンズエンジンとキャットエンジンの選択が出来ました。 しかし、キャタピラー社は2010年以後RV用エンジンは勿論大型トラック用エンジンからも手を引いて仕舞い、現在大半はカミンズエンジンでそれにベンツが加わっています。 キャタピラー社が陸上輸送(トラックやRV)用エンジンを断念した背景には排気ガス規制が大きく影響したようです。 カミンズも排気ガス規制や燃費問題では大分苦労していました。 

フォードのパワーストロークエンジンを製造しているナビスターインターナショナルはワークホース(前シボレー)を買収して一時RVビジネスに足を入れ、RV用デイーゼルエンジンも製造しましたが本の僅かの期間でRVビジネスから撤退しています。

参考:
日本に輸入されるデイーゼルプッシャーは1995年から2000年前後のナローボデイーが多いと思われますので、書く内容は出来るだけその時代に合わせる様にしています。

次回はエンジンとトランスミッションに関して書く予定です。

ナショナルRV製 ケロビアン台数

此れまで書きました様に、1990年代後半までには殆どのクラスA(特にデイーゼルプッシャー)がワイドボデイーに成りましたが、例外があります。 其れはナショナルRV社のケロビアン(96インチ幅)です。 この車はオーストラリア/ニュージーランドを始め、ワイドボデイーが輸入出来ないヨーロッパの国からも探し求める人が多く、RVフォーラムで時々話題になります。 2001年型だけが極く少数製造販売された思われていますので少々調べてみました。
http://www.pacnats.com/Links/NRV%20Brochures/2001/Caribbean.pdf

1998年12月1日にケンタッキー州で行われたRVショーでスパルタンモータース社は3種類のサミットシャシーを発表しています。

参考: 不思議なのは、私のシャシーもサミットシャシーですが製造日は1年以上前の1997年6月23日です。 この様な事は時々あることで、カミンズ社の説明書等ではISB(24バルブ)エンジンは1998年後期に発売が開始された事になっていますが、私のISBは1997年5月1日に製造されています。

翌1999年3月22日の新聞にスパルタンモータースが前年の12月にRVショーで発表した新型サミットモデルシャーシーがナショナルRV社に販売する契約を交わした事を発表しています。

その後、1999年6月17日の新聞にナショナルRVが2種類の新型RVの製造発表をしています。 それに依りますと、ナショナルRVはスパルタンモータースと提携して、新サミットシャーシーを使用したデイーゼルプッシャーを開発し、ケロビアンとして1999年後半と2000年に販売をすると記されています。 ケロビアンはナショナルRVが1997年に販売開始をしたトレイドウインドモデル(ワイドボデイー)と同じ高級内装/外装を保ちながら、カミンズエンジンとアリソントランスミッションを組み合わせた経済的な新型サミットシャシーを使用する事でコストを下げると記しています。 尚、この時に同時に発表されたアイランダーモデルは高級デイーゼルプッシャー(ワイドボデイー)で、このモデルは当時ナショナルRVが買収したカントリーコーチ社製のシャシーを使用すると発表しています。

この当時、ナショナルRVは急成長をしており、高級デイーゼルクラスAの層とガソリンクラスAに近い層に更に市場を広げるのが狙いでした。 

スパルタンモータースの記録に依りますと、ナショナルRVには1999年5月14日にケロビアンに使用されている物とと同仕様のサミットシャシー(VIN #32222)が1台売られていますので、恐らくこのシャシーがケロビアンの開発に使用されたものと思われます。 同じ年の7月9日に20台、8月20日に30台、とその後も30台の単位でナショナルRVに売られ、最後のサミットシャシーはVIN #37378が2000年5月27日に売られています。 スパルタンモータースからナショナルRVにこの間合計約170台のサミットシャシーが販売されていましたがどのモデルに使われたかは記されていません。 果たして170台のケロビアンが製造されたのでしょうか?

ナショナルRVの2001年型クラスAは次のモデルが販売されています。 
デイーゼルプッシャー
National RV 2001 Caribbean (260HP ナローボデイー)
National RV 2001 Sea Breeze Bus (260HP ワイドボデイー)

National RV 2001 Islander (330HP ワイドボデイー)
National RV 2001 Marlin (300HP ワイドボデイー)
National RV 2001 Tradewinds (330HPワイドボデイー)

ガソリン車 (クラスA)
National RV 2001 Dolphin
National RV 2001 Sea Breeze Scout
National RV 2001 Sea Breeze MH
National RV 2001 Sea View
National RV 2001 Surf Side
National RV 2001 Tropical

仕様を調べてみますと、ケロビアン(ナローボデイー)の他にシーブリーズバス(ワイドボデイー)だけがケロビアンと同じ仕様のサミットシャシーを使用していました。

上のリストには2001年型のシーブリーズバスがありますが、実際には2001年型の中古シーブリーズは殆ど無く、殆どが2002年型の為、ケロビアンに使用されなかったサミットシャシーが使われてワイドボデイーのシーブリーズが製造された可能性があります。 何れにしても私は100台以上のケロビアンが製造されたと予想しています。

モーターホームの車幅

暫くお休みをしていましたが、又書こうと思います。 と言っても何を書いたら良いのか分かりませんが、日本で多くの人が興味を持つRVに関する知識は持ち合わせていません。 ネットキャンパーをご覧の人の中にはアメリカ製RVにお乗りの方もいらっしゃいますし、日本ではアメリカのRVに関する情報が限られていると思われますので、少々アメリカのモーターホームに関係した事柄を何回かに分けて書いてみます。 

アメリカでは1982年(レーガン大統領時代)に連邦政府の条例“Surface Transportation Assistance Act of 1982(STAA of 1982)”により商用トラックのサイズが見直されました。次のサイトにはそのサイズに関して要約されて居ます。
http://ops.fhwa.dot.gov/freight/publications/size_regs_final_rpt/size_regs_final_rpt.pdf
(STAA of 1982)は単にサイズだけでは無く、実際には陸上運送の合理化や将来の道路整備を全国的視野で定めた結果です。 
https://connect.ncdot.gov/business/trucking/Trucking%20Documents/STAA%20Guidelines%20and%20Procedures.pdf
連邦政府のこの条例ではRVは除外、即ちRVは各州の法令に従ってそれまで通りの車幅制限である8フィートでした。

その後各州が道路法規を改正して徐々に8フィート(96インチ=2.44m)から8.5フィート(102インチ=2.6m)に変更になりました。 州の道路法規では車幅や全長に関しては車両全般(Vehicle)で扱っている為にRVと商用トラックとを別扱いにされておらず、此れに目を付けた豪華クラスAを製造するRV会社が1980年代後半になって102インチ幅のデイーゼルプッシャーを製造、その後1990年代に入ってからは一般クラスAにも徐々に波及して行きました。 

アメリカの道路法規は各州毎に決められていて、速度制限同様に車幅/全長制限も各州で異なります。 現在は殆どの州の車幅制限が102インチになっていますが、100インチの州があったり、アリゾナ州の様に未だに96インチの州もあります。 
http://www.leginfo.ca.gov/cgi-bin/displaycode?section=veh&group=35001-36000&file=35100-35111

従って、厳密には102インチの車幅の車はアメリカ国内何処でも走行して構わない訳では無く、本来ならインターステートハイウエー又は特定の認められえた道路だけしか走れない州もありますが、州間の相互協定で自由に乗り入れが可能です。 実際には相互協定を認めない場合や、幹線道路以外の走れる道路が細かく記されている州もあるようですが、車幅制限で一般RVerが捕まった話は聞いた事がありません。

次のサイトは牽引に関しての法律ですが、モターホームやトラックも含めたものです。
http://towingworld.com/towinglaws.cfm

1990年代後半にはワイドボデイーと呼ばれる100インチ‐102インチ幅のモーターホームがポピュラーとなり始め、その頃のRVフォーラムにはワイドボデイーとナローボデイーのどちらを購入するかの質問が頻繁に登場し、その頃同じくポピュラーになったスライドアウトと一緒によく議論されていました。 よく目にしたのは、ナローボデイーは買い替え時に値下りが激しいので損との理由でワイドボデイーを推薦する意見が多く、他にも理由が色々あると思われますがワイドボデイーは瞬く間に主流となりました。

続く。

タンク内燃料ポンプに関して

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引き続き今回の説明も1988年-1998年までのF53 モーターホームシャシーに装備されている燃料ポンプ、即ち460cuin(7.5リットル)でフューエルインジェクションエンジン用です。 

RVフォーラムでの書き込み、特にフォードのタンク内燃料ポンプの様に多くの人が経験している問題に関する書き込みを多数読みますと症状、解決法、部品の良し悪し等に方向性が浮き上がって来ます。 

ターバイン型タンク内ポンプ:
フォードの第三世代の改良型ポンプ、即ちターバイン型タンク内ポンプは故障し難く、このポンプに交換した人は再度故障をしていない様です。 “ターバイン型に交換してから未だ故障をしていない”や“必ずターバイン型ポンプの購入を推薦する”の書き込みが多数あります。 

しかし、タンク内ポンプを2度も3度も交換している人も居ますが、それらはターバイン型ポンプでは無いのかも知れません。 修理工場(デーラー?)でタンク内ポンプを交換し、短期間で故障したポンプを保障で無料交換した例もありますが、これも果たしてターバイン型であったかは書き込まれて居ません。 

代替ポンプの種類:
前回書きましたフォードのTSB(Technical Service Bulletin)に表示されていたタンク内燃料ポンプの部品番号はF6PZ-9H307-DAでしたが、現在はこの部品番号に代わってF6PZ-9H307-DBが使用されて居るようです。 何れにしても両部品番号はターバインタイプの燃料ポンプです。 

フォードF53(460エンジン)用のタンク内燃料ポンプは社外品を含め、様々価格のポンプが出回っています、即ち、Motorcraft、Airtex、Delphi、Bosch、ACDelco、Spectra等が製造している様です。 価格を考慮して果たしてどの部品が良くて、どの部品(メーカー)を避けるべきかを決める事は非常に困難ではありますが、タンク内ポンプの交換は非常に大変な作業(取り付け費用が高い)ですし、旅行先で再度故障が起こる事を考慮しますと堅実的な選択が望ましいかも知れません。   

フォード公式サイトに示されている部品番号はF6PZ9H307DA(F6PZ9H307DB=改良型)、Motorcraftの部品番号はPFS48ですので、これらの部品番号が付けられたポンプを購入すれば無難と思われます。

参考1:
あるRVerはデーラーから購入するか、価格の低いAirtex製をネットで購入するか迷った挙句、デーラーから購入し、家に帰ってMotorcraft製の箱を開いたところ中のポンプはAirtex製であったそうです。 即ち、フォードデーラーの販売するポンプはMotorcraft製の箱に入っていて、中身のポンプはAirtex製の様です。 Airtexは非常に良い製品を製造するとの書き込みも幾つかありますが、Airtex は種々のポンプを製造していますのでターバインタイプである事は勿論、上に記した部品番号に関連したポンプである事が大切です。

参考2:
Motorcraftのタンク内ポンプ(部品番号PFS48)の説明には興味深い事が記されています。 即ち、品質や耐久性が良い事と一緒に、“温度が高くなった燃料に対する機能が抜群に良い”と記されています。

Motorcraft PFS48 Motorcraft Fuel Pump F6PU9H307DB, F6PZ9H307DB
Motorcraft PFS-48 Fuel Pump MOTORCRAFT FUEL PUMP MODULE ASSEMBLY NEW -- Electric Constructed using stringent OE testing and durability specifications Its flexibility and rugged design delivers an efficient and long-lasting performance Has a quiet and reliable operation and exceptional hot fuel handling capability Features efficient single-stage turbine design exacting flow rate and operating pressure precision-balanced armature for low noise and vibration and exacting check valve design-outlet fitting configurations to meet specific vehicle application requirements and applications.


次回は補助ポンプ(インライン燃料ポンプ)の使用に依る問題解決に関して書く予定です。

フォードクラスA用代替燃料ポンプ (TSB 97-23-9)

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此れまで何回かに分けてフォードのタンク内燃料ポンプの問題(故障)に関して書きましたが、今回はフォード社が発表した代替燃料ポンプに関する公式報告(Technical Service Bulletin 97-23-9 = 写真)を紹介します。

該当車: フォード 1989 - 1997 F53 モーターホーム
タンク内燃料ポンプ: ターバインタイプ
ポンプ部品番号: F6PZ-9H307-DA
配線キット 3ピン用: F7PZ-9A213-BA
配線キット 4ピン用: F7PZ-9A213-CA

注意: 製造年月日でコネクターのピンの数が異なりますので配線キットの選択には注意が必要です。 此れに関しては写真左下の部品番号と部品の説明を参考にして下さい。


補足1: 
1988年以前のフォード460エンジンはキャブレータータイプで、又、1998年以降はフォードV10 エンジンに変更になっていますので、従って、該当車はフューエルインジェクションタイプの460エンジンとなります。 

補足2:
RV会社はシャシーをまとめ買いをしますので2-3年が経たシャシー使用のRVを新車として販売する場合もあります。 即ち、1991年型のRVにキャブレーター型フォード460エンジンが搭載されている場合もありますので、その場合はこの公式報告には該当しません。 反対に1999年又は2000年でも該当する場合も考えられます。


参考:
デーラーでポンプを交換した場合の作業時間は1.6時間、即ちタンクを下ろしてポンプを交換し、更にタンクを戻して完了するまでの作業時間が約1時間40分と記されています。

フォードの燃料ポンプの故障

既に書きました様にフォードの燃料ポンプの故障例は非常に多く、更に現実的な観点から書きたいと思います。

該当するフォードRV:
問題を起す燃料ポンプはタンク内に取り付けてあるもので、1980年代、1990年代のRVの殆どが該当する様で、特にクラスAガソリン車のF53シャシー(460エンジン)で多数の人が問題を経験しています(私はクラスAのフォーラムを主に読みますのでこの様に感じるのかも知れませんが、クラスCの持ち主の書き込み(解決法)も含まれて居ます)。

 1998年前後型以後のV10 エンジンを搭載した燃料ポンプの故障は殆ど報告されて居らず、特別に燃料ポンプの故障を問題視する必要は無いようです。

故障の兆候:
走行中に燃料ポンプが故障を起しますとエンジンが停止し、再スタートをしない状態に成りますが、5分から1.5時間程度待つと再スタート出来る場合が多い様です。 

故障の原因:
前回書きました様に、フィルターが目詰まりを起しますとポンプに通常以上の高い負荷が掛かり故障の原因に成ります。 即ち、ポンプが熱を持つ為に故障する様です。

燃料ポンプはタンク内の燃料で熱を取る様に取り付けられています。 これを証明する様に次の状況で故障が多く起きています。
• 高温地帯を走行中に起り易い
• 燃料タンクが空に近い状態で起り易い
• 山道の坂が多い地域で起り易い

緊急処置:
エンジン(故障)停止には色々な原因が考えられますが、燃料ポンプが原因の場合は次の様な方法でエンジンを再スタートさせて修理工場迄走った人や、中には自宅まで500Km程度走行した人も居ます。 無論、再スタート出来ない場合も考えられます。
• 燃料ポンプの温度が下がるのを待って再スタートさせる
• 燃料が空に近い場合は燃料を足し満タンに近い状態にする
• 温度が低い夜間や早朝に走行する

故障防止措置:
燃料が1/3程度になったら満タンにし、1/4以下になる事を極力避ける事で燃料ポンプがオーバーヒートする事を防ぎ、ポンプの停止を避けれる様です。 又、故障して取り出したポンプが錆びているケースもあり、長期間保管する場合は常に満タンにする事でタンク内での結露が抑えられ錆を防ぐ事にも役立ちます。 又、燃料フィルターを定期的に交換する事も非常に大切で、通常15000マイル(24000Km)毎の交換が奨励(フォード)されています。 

状況により燃料ポンプの寿命は当然異なり、2万マイルで故障した人も居れば5万マイル人も居ます。 又、フォードデーラーで新品ポンプと交換した後3000マイルで故障した人も居ます。

何れにしても、故障をし易い燃料ポンプを装備している該当RVは少なくとも15年が経て居ますので、若し未だ故障をしていない場合は非常に幸運だったと考えて速やかに対策を講じる必要があると考える冪だと思われます。 旅先で燃料ポンプ交換は非常に高価ですし、日本では先ず代替ポンプ入手にも時間が掛かると思われます。

トランスファーポンプとフューエルフィルターに関して

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DPのエンジンが始動しなくなったり、走行中にエンジンの回転数が上がらなくなったりした場合、RVフォーラム等でよく原因として話題になるのがトランスファーポンプとフューエルフィルターです。

トランスファーポンプに関して:
トランスファーポンプはデイーゼルエンジンの燃料ポンプです。 デイーゼルエンジンには2個の燃料ポンプ(Cumminsエンジン)が付いていて、人に依って異なる呼び方をしていますが、フューエルポンプと呼ばれる燃料ポンプはインジェクションポンプの事を指し、燃料を電動でインジェクションポンプに送る燃料ポンプはトランスファーポンプと呼ぶのが一般的の様です。

トランスファーポンプはエンジン(Cummins)の横に付いていて、イグニッションキーをオンの状態にしますとこのポンプは約30秒ほど振動音発して自動的に停止します。 若し振動音が聞かれない場合はこのトランスファーポンプが壊れていると見て間違い無いでしょう。 私は旅行中にエンジンが掛からなくなり、この方法でトランスファーポンプが異常と見て交換し、問題解決をした事があります。既に少なくとも2回交換していますし、壊れ易い事を知っていますので常にスペアーを携帯しています。

トランスファーポンプが壊れてもエンジンは回転を続け、力は無くても走行を続ける場合も有るようですが、そのまま走行を続けるとインジェクションポンプを駄目にする可能性が高く、壊れた場合は高価です。 トランスファーポンプは$200以下で交換はそれほど大変ではありませんが、インジェクションポンプは$3000(?)で、交換も大変(高価)だと思います。

トランスファーポンプ交換:
交換をする際は当然ながら燃料漏れを起こさない様にしなくてはなりません。 バンジョーフィッテイングと呼ばれるポンプの両サイドコネクターには漏れ止めの薄いワッシャー(銅製も有りますが、低圧の場合はペーパー製も多い)が2枚づつ付いていますので、落とさない様にする必要があります。 新品ポンプと一緒に来ない為、古いワッシャーを大切に扱うか、新品を購入して交換する事を考慮する必要があります。 又、手が届き難い所にありますので、慎重に行わないと隙間から空気を吸い込み、エンジン不調の原因ともなり兼ねません。 取り付け完了後はイグニッションキーをオンにしてポンプが振動音を発する事と漏れが無い事を確認する必要があります。

フューエルフィルター:
エンジンが不調であったり、高速走行が出来ない理由がフューエルフィルターに起因している場合も少なくありません。 最近も話題になっていましたが、何らかの理由で汚れた燃料がタンクに入りますと走行中にフィルターは詰り、エンジンは徐々に不調になります。 フィルターを交換して正常に戻ってもしばらく走ると同じ様にエンジン不調状態になるのが一般的なこの種の問題で、フィルターを4-5回交換しないと元の状態には戻らないと書いている人も有ります。 デーラーや修理工場ではフューエルフィルターを交換すると同時にタンクから燃料を全て抜いて新しい燃料と交換する方法です。 常識的に考えて満タンにした後起こる可能性が大きいので、満タンが400リットル、500リットルの場合は$400から$500の燃料を捨てる事になります。

フューエルフィルター交換:
インジェクターノズルの穴は非常に小さいので、フィルターを交換に際はゴミが中に入らない様に細心の注意を払う必要があります。 フィルター交換後はイグニッションキーをオンにしてトランスファーポンプを2-3回起動(1回30秒)させ、運が良ければエンジンが始動します。しない場合はインジェクションポンプに近い部分のコネクターを緩めてトランスファーポンプをオンにしてエアー抜きをする必要があります。

上の写真はトランスファーポンプ、フィルター、並びにバンジョウーフィッテイングに関するものです。 バンジョーフィテイングはその形状が楽器のバンジョーに似ている事からこの名で呼ばれます。 

旅行中にオイルフィルターがどうしても必要に成る事は先ず無いと思いますが、フューエルフィルターは上の様な理由で常に少なくとも一個のスペアーを携帯する事は、デイーゼルだけに限らず非常に大切です。 特に1980年代、1990年代フォードはフューエルポンプやフィルターの問題がRVフォーラムでよく話題になります。


参考: 私も昔ガソリン車で苦い経験をした事があります。 田舎道のガソリンスタンドで給油した際に給油ノズルからガソリンの出が悪くなり、店員(ガソリンスタンドのオーナー?)は無理をして注油をし続けました。 その後走行中にエンジンは不調を起こし、最初は電気系統と思い込んで色々調べましたが、最終的にフィルターにたどり着き、フィルターを交換して何とか家まで帰り、その後徐々に直った記憶があります。 現在は寂れた田舎のガソリンスタンドでは決して注油はしません。

又、ガソリンスタンドにタンクローリーが駐車していてタンクに燃料を補充している時は給油を避けた方が良いとよく言われています。 之は補充する際に、普段は沈殿している不純物が浮き上がっていて燃料と一緒に自動車のタンクに入る可能性がある為ですが、誰か(専門家?、タンクローリーの運転手?)にこの事を話して、その様な事は起こらない様になっていると言われた記憶があります。

ライド-ハイト-バルブ

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ライドハイトバルブはエアーサスペンションの空気流量を制御して車高を調整する目的のバルブで、ライドコントロールバルブ、レベリングバルブ等とも呼ばれます。

ライドハイトバルブの重要性:
• 前回、ドライブシャフトのグリースアップの重要性を書きましたが、ライドハイトバルブもこの事に大きな関係があります。 即ち、DPはドライブシャフトが短い為にライドハイトバルブの調整が僅かでも狂っていますとドライブシャフトとトランスミッション(エンジン)が直線状態から外れ、ユニバーサルジョイントがより厳しく運動する状態に成り、その結果デファレンシャルにも周期的な上下方向の余分な力が掛かりギヤーやベアリングの磨耗、更には振動音の原因となります。

• 車高は(フロント)アライメントにも影響しますので、アライメント調整を行う前にライドハイトバルブの調整を必ずする必要があります。 当然ですが、ライドハイトバルブの調整が狂っている状態では正確なアライメントは得られません。

• ライドハイトバルブ調整は単に車高を高くしたり低くするだけでは無く、左右の傾斜にも影響します。 幾らアライメントが正確に調整されていても、車体が左右に傾斜していますと直進性を失いハンドルを取られる原因になります。

ライドハイトバルブの機能に関して:
ライドハイトバルブはエアーサスペンションを装備した車のエアーバッグ(エアースプリング)の空気圧調整を行い、通常3個のライドハイトバルブが取り付けられていて、前2個後ろ1個もあれば後ろ2個前1個の車もあります。 
ライドハイトバルブは車体に、そしてそのバルブのレバーは車軸の一部に取り付けられて、予め規定された車体の一部と車軸の一部の距離を基準値に保つ働きをします。 即ち車高が下がってエアーバッグが圧縮されて基準値より小さくなればエアーバッグに空気を送りこみ、基準値より大きくなればエアーバッグ内の空気を排出します。


危険: 調整は危険を伴います。 エアーバッグの空気が全て抜けますと車体が下がり人間を潰す結果にも成ります。 調整中に死んだメンバーがいる事がRVフォーラムで報告されていますし、十分に調査をして安全の準備をして行って下さい。 ピット(溝)、4輪を上げるレール構造、その他ジャッキ、ブロック等を使用して事故の起こらない状況確認は不可欠です。

ライドハイトバルブの調整:
既に書きました基準値はシャシーメーカーがシャシーを設計した際に定めた数値で、シャシーメーカーに問い合わせればVINナンバーを元に、測定基準となる場所と数値を教えて呉れます(ウイニベーゴー、フリートウッド、ナショナル、モナコ等のRV会社に問い合わせても分からないと思われます)。
• 基準値を知る
• タイヤ空気圧を基準値に調整する
• 水平な場所に、4輪全てが接地している状態で停める
• エアーシステムが規定の空気圧である事を運転席のゲージで確認する
• ライドハイトを変更をする前に、此れまでのレバー位置をマジックペン等で記しをする
• 少量づつ調整する
• 調整後は車体を揺らして基準値である事を確認する
• バルブ付近の空気漏れと共に、全てのエアーホース(接続点)の漏れが無い事を確認

注意:
• 初めて調整を行う人は十分な知識を得て、安全である事を確認してから行って下さい。
• ライドハイトバルブによっては樹脂部がひび割れを起こしエアー漏れを起こします。 私のバルブは全てひび割れを起こし、順に全て交換しました。
• 全く同じシャシーモデルでも全く異なる(互換性の無い)ライドハイトバルブが使われている事を最近知りました。 代替品購入時はオリジナルを参考にして下さい。 メーカーにより形状が異なり、使用可能な場合もあります。
• 水平取り付けと直立取り付けの違いで、バルブを分解してレバーの位置を90度変更する必要がある場合もあります。

安全第一で、疑問がある場合は専門家に相談して下さい.